Winding Road サンプル
※サンプルですので一部分を抜粋して掲載しています。
多少改行などで違う部分はありますが、内容は同じです。




「何かいい手は……しかし凛に頼むのは…」
翌日。問題解決をはかろうにも上手い手段が浮かばず気が滅入りそうだったので、
気分転換も兼ねて商店街へ食材の買い出しに出掛ける。
スーパー『トヨエツ』で買い物をしていると、前から見慣れた顔が歩いて来た。
『希代の魔女』の二つ名を持つ魔術師のサーヴァント・キャスター。
……現在はただの旦那大好き主婦と化しているが。
「キャスター」
「あらアーチャーじゃない、何だかいつにも増して眉間にシワ寄せてるわね……何かあったのかしら?」
「いや……」
そんなに酷い顔をしているのか…と驚いて顔を触っていた向かいで、
「そうだわ!」と何やら閃いた様子のキャスターがポンと手を打つ。
「確か貴方、電化製品とかの扱いに詳しいわよね?」
ズイッと急に近寄って来るのでその気迫に押されて思わず上半身が仰け反る。
「? まああまり専門的な事でなければ…」
「良かった〜、じゃあこれからウチへ来て下さらないかしら?」
「……………は?」
―そういうワケで、スーパーの買い物を済ませた足で柳洞寺へ向かうハメになってしまった。
道すがらに事情を尋ねると、何とかというTVドラマ(どういう内容か、などを延々と説明されたが
適当に返事をして右から左だったので全く記憶にない)が非常に面白く、
もう一度見たいと言っていたら葛木氏と寺の人間がDVDとデッキをくれたらしいのだが、
どうしたら見れるのかが全くわからないと言う。
生憎葛木氏も寺の人間も(当然アサシンも)機会に関しては詳しくないようで困り果てていたところに、
私と遭遇したらしい。彼女にとっては『渡りに舟』というヤツだ。


接続に関して特に難しくはないので数分で片付き、試しにDVDをかけても何ら問題はなく完了したのだが、
キャスターにとっては物凄く有り難く嬉しい事だったようで、握られた手をブンブンと振られる。
「ホント助かったわ〜、もし貴方に何か困った事があればいつでも言って!お返しに何でも協力するわ!」
かなり興奮気味に言われた言葉に思わず反応してしまった私は、余程余裕がなかったのだと思う。
「実は…早速で申し訳ないが、頼みたい事が――――」

……今思えば、相談相手が悪かった……――――――――――





数日後、依頼していた薬が完成したとの連絡を受け、柳洞寺から戻り今に至るワケだが………。
「………………」
薬瓶を眺めて、しばし思案に暮れる。
衛宮士郎への想いは日に日に膨らむばかりではあるものの、座に還らずに済む方法はないかと考えて
辿り着いたのは『好きだと思う気持ちをそれに連なる記憶と共に全て消してしまえばいい』という事だった。
しかしそれを頼む相手として凛を選ぶのは「何を考えているんだ」と却下されてしまいそうだし、
何より衛宮士郎に筒抜けになってしまう。それを考慮に入れてキャスターに相談してみたのだが………
「何故あんなに笑顔だったのか…」
薬を受け取った時に使用方法についての説明を受けたのだが、終始ヤケに上機嫌だった。
何があったのか気になるところではあったが、延々葛木氏とのラブラブ話を聞かされても困るので
あえてスルーしたが、不安が残るところではある。
「………キャスターが失敗するとは思えんしな」
そう納得して瓶を手に取り、説明を頭の中で復唱する。
『飲みながら消したい記憶について強く思い描け』
しばらくの間、魔術が発動する影響で気を失ったりもするが、
気が付く頃には完了していて後遺症もないそうだ。
倒れる可能性を考え、自室の布団に座りながら行動を開始する。予想外に味のしなかった中身を飲み干し、
横たわりながら呪文のように頭の中でひとつの事を繰り返す。
意識が薄れて行く中、衛宮士郎の少し悲しげな笑顔が過って消えていった――――






To be continued...



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