【magnet/サンプル】
教師アーチャー×生徒士郎のパラレル設定本。小説オンリーです。
出会いから最悪の2人は、試験をきっかけにいつの間にか仲良くなりつつ、すれ違う感じです。


magnet サンプル
※サンプルですので一部分を抜粋して掲載しています。
多少改行などで違う部分はありますが、内容は同じです。




「―――ッ」
その姿に見蕩れていた自分に気付き、否定するように少し頭を振りつつ、腕前の素晴らしさに歯噛みする。
「…しかし衛宮が私の身体の心配とは、どういう風の吹き回しだ?」
弓を下ろしてこちらに向き、先程の会話に疑問を抱いたらしく、
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら問いかけて来るアーチャーに、カッと頭に血が上る。
「違…っ!俺はただ、先生が来なくなれば気が楽でイイから来るなって意味で言ったんです!」
勘違いするな!と言って顔を背ける士郎に、
「からかい甲斐のある奴だな」
と含み笑いを洩らしつつ矢を回収に奥へ消える背中に、士郎は蹴り飛ばしてしまいたい衝動を覚える。

――何故なのかはわからないが、この男は士郎の前ではガラリと態度が変わる。
普段の品行方正で朗らかな対応ではなく、小言や揶揄など『小姑か』と言いたくなるような
ネチネチとした嫌がらせをしてくるのだ。
一方それを受ける士郎もそれを無視するなり普段のように何でもない事だと躱せばイイものを、
何が気に入らないのかいちいちそれに反発して行くのでそれが相手を増長する事になり、
結果口論まがいなものに発展してしまう事もしばしばである。
そんなワケで士郎にとってアーチャーという教師は苦手……というよりむしろ『嫌い』な
分類に入る人物となった。
……アーチャー側がどう思っているかは定かではないが、態度からして好意的なものは感じないので、
おそらくは同じようなものだろうと士郎は考えている。


「……ホント、何なんだろうなアイツは」
帰宅し、夕飯を済ませた士郎は、台所で食器を洗いながらブツブツと呟いている。
「ん〜?何が何が?」
その皿を受け取って布巾で水気を取りつつ所定の位置に戻しながら、
先に帰宅していた大河が呑気にその呟きを拾う。
「アーチャー先生の話。何かにつけて説教してくるからムカツいてさ……」
士郎は余程腹に据えかねているようで不機嫌そうに言うのを、大河は驚きつつも何かにピンときたらしく、
ふんふんと頷くだけでそのまま話を続けさせる。
「今日もせっかく人が入れてやったお茶の採点とかしてくるし、床の拭きが甘いとか言って来るし……」
更に愚痴を続ける士郎が食器洗いを終えて蛇口を閉めて振り返ると、
横で聞いていた大河がやけにニコニコしている事に気付く。
「………?藤ねえ?何そんなニヤニヤしてんのさ、気持ち悪い」
「いや〜……何だかんだ言って士郎もアーチャー君の事気に入ってるんだな〜って思って、
 お姉ちゃんは嬉しくなったのだ〜♪」
「はぁ!?何をどう聞けばそういう解釈になるんだよ!?むしろ嫌いだって言ってるんだけど」
大河の発言に呆気に取られながら力一杯否定の意を表すと、何やら確信を持った表情で
「チッチッチッ……甘い甘い」と人差し指を振るポーズをする。
「士郎の場合、ホントに嫌いだったら話もしないし極力関わらないようにするもん。
そんな士郎が口論する程関わってるって事は、相当気に入ってる証拠なんだもんね〜」
「……………」
お姉ちゃんをみくびってもらっては困るよキミー、と勝ち誇って言う大河に、
実際その通り過ぎてぐぅの音も出ない。






To be continued...



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