【君=花/サンプル】
小説29pのみです。今回はパラレル設定で執事・アーチャー×貴族のご主人様・士郎です。
エロ度はちょっと高め……かも知れないです。オリキャラ・媚薬表現などがあります。


君=花 サンプル
※サンプルですので一部分を抜粋して掲載しています。
多少改行などで違う部分はありますが、内容は同じです。




小川の流れる小さな森を抜けた先に、美しい屋敷が建っている。
景観を損なわず、むしろ調和の取れたそこを、
土地に暮らす人々は「主の人となりを表しているようだ」と朗らかな笑顔で語る。
屋敷の主人・衛宮士郎はまだ19歳と年若いものの、
ビジネスには才覚があるようで、数々の事業で成功を収めている。
しかしそれに驕る事なく、周辺の慈善事業に出資して人々を助けたり、
施設を建てるなど、己に使わずに土地の人々に尽くす人格者だ。

「―でも、使用人が一人しかいなかったり、家事全般が
 自分で出来ちゃう主ってのは、問題あると思うんだけど」
食堂でテーブルを囲みながら食事を楽しむ中、
本日の衛宮家の客人である遠坂凛は紅茶を片手にボソリと呟く。

父の代からこの地に移り住み、事業を始めた衛宮家とは違い、
遠坂家は古くから続く由緒正しき資産家の一族である。
幼い頃より次期当主として必要な知識や礼儀作法を叩き込まれた凛にとって、
同じ立場である筈の目の前の男は異端にすら思える存在だ。
「『自分の事は自分でできるように』がモットーだったからなあ…
 親父もそういう人だったみたいだし」
そう呑気に答えている士郎も凛も今現在両親はいない。
互いに幼い頃に亡くし、凛はそのまま当主となったが、士郎は年端もいかない頃だったので、
親戚に預けられて育ったらしい。どうやらその頃の教えの影響でこうなったようだ。
「まあ……そのおかげでこんな美味しい食事が出来るんだから、それはそれでアリなのかしらね」
視線を向けたテーブルの先には、シェフ顔負けの豪華で色とりどりの美しい料理が並べられている。
しかもこれを作ったのがこの館の主というのだから驚きだ。
そのどれもに客人へのもてなしの心が込められていて、非常に士郎らしいと思わず苦笑が洩れる。
そしてその横では、護衛として凛に付き添って来た、黒いスーツを身に纏う
もう一人の客人― セイバー ―が、キラキラと瞳を輝かせてその料理を眺めており、
任務中のキリリとした騎士然とした姿とはまるで違う、年相応の少女らしさを感じ、
士郎の目が嬉しげに細められる。
「何でもイイから早く食べろよ。冷めたら美味しくないし、何より待ってるセイバーが可哀想だ」
「なっ…私は……!」
反論すべくセイバーが腰を上げようとしたと同時に空腹を訴える音が響き、
何も言えなくなってしまったセイバーは赤い顔を俯かせて大人しくなってしまう。
その可愛らしい姿にクスクスと笑いながら、凛は銀食器を手に取る。
「そうね、私の大事な守護者を空腹にさせておくわけにはいかないし、頂きましょ」
「……っ リン!」
その非難の声もよそに、食事が始まった。
一口料理を運ぶ度にぱあっと顔が綻びコクコクと頷くセイバーに、士郎も嬉しそうに微笑みながらも、
何かを探しているのか周囲をキョロキョロと見回して落ち着かない様子だ。
客の前で席を立つのは失礼にあたる為そこまではしないものの、ソワソワした様子で食事もせずにいる。
しばらくすると、奥にある厨房からグラスと水の入ったピッチャーを持った衛宮家唯一の使用人である、
執事のアーチャーが現れる。それを待っていたらしい士郎が表情を輝かせ、
隣に来るのを今か今かと待ちわびつつ、その行動を見守る。
アーチャーが各々の手元に水を入れたグラスを置き終えると、
士郎が自分の横の椅子を引いてアーチャーに座るよう促す。
それに苦笑しつつ、客人達に一礼して着席すると、ようやく士郎も食事を開始した。
一連の行動を見るともなしに視界に入れてしまっていた凛は、やれやれといった表情で
「どっちが主なんだか……」と呟く。




To be continued...



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