Super Affection! サンプル
※サンプルですので一部分を抜粋して掲載しています。
多少改行などで違う部分はありますが、内容は同じです。




買い物のついでに寄って以来、よく使うようになった喫茶店には、
『アイルランドの光の御子』と呼ばれているハズの槍の英霊・ランサーがバイトとして働いている。
初めこそ険悪な雰囲気だったのだが、日々彼に起こる事象のあまりの酷さにそんな気分も
ゴッソリ削がれてしまい、以来穏やかに店員と客という関係を続けている。
今日もランサーの愚痴をBGMに、彼の淹れたコーヒーの香りを楽しんでいる。…普通は逆だと思うのだが。
「しっかし…持って生まれたモンとはいえ、もうちょっと幸運値が高くても
 イイんじゃねェかと思わずにはいられないよなぁ」
「そうだな…君の場合は特に」
己の運の具合もあまり良いものではないと思うが、ランサーの不運は並はずれている。
…ステータスにEの後に小さく「x(エックス)」が書かれているのでは、と考えてしまう程に。
「おやおや?ご自身の運の悪さに随分とお困りのようですね?」
その時、こちらのやりとりを聞いていたらしい客の一人が、
にこにこと優しそうな笑みを浮かべて近寄って来た。
「もしかすると、私ならお力になれるかも知れません」
「マジでか、そいつぁ有り難ェ!」
着物の女性がランサーの声に更に笑みを深める。
―しかしその笑顔の中に『いいカモがみつかった』という
悪魔の微笑が浮かんでいた事を、その時はまだ知る由もなかった。


――ここは【アーネンエルベ】時間軸も作品の壁も越える、『特異点』の喫茶店。

(中略)


「衛宮士郎、ちょっといいか?」
自室に気配があるので入り口をノックすると、中から「何だ?」と声が返って来た。
「少し頼みたい事があるんだが――」
勉強に集中しているところだと申し訳ないなと思いつつ開けた先には、着替え中だったらしく
シャツを半分程脱いで胸辺りまで肌を晒す衛宮士郎がいた。
「…着替え中だったか、すまんな」
一瞬固まりはしたものの、同性同士であるし、一応謝りはするが出て行く程の事態ではない。
相手も特に気に留めた様子もなく「ああ」と返事をしただけで着替えを続けた。
…確かに全裸でいられたらお互い気まずかったかもしれないが。
「道場でセイバーと稽古した後だから、ちょっと待っててくれ」
「わかった」
戸にもたれて待つ事にしながら、こちらに背を向けた衛宮士郎にチラリと視線を向ける。
筋肉のつき方はまだ発展途上というところだが、アスリートとしてならば良いレベルだと思う。
それに、肌にうっすらと浮かぶ汗がそこはかとなく色気を醸し出していて、
何やらアヤシイ気分にさせられる。
「――っ」
妙な思考に内心で激しく動揺しつつ、庭へと視線を何とか逃がす。
同性愛者でもないのに、衛宮士郎の身体に欲を覚えたのは……
おそらく、汗という体液に微量とはいえ含まれていた魔力のせいだろう。
魔力不足という事はないが、衛宮士郎と主従関係になってからは
充足といえる程の量が供給されていない。数値にすれば60%前後をウロウロしている辺りなので、
日常生活を送るという点では可もなく不可もなくといったところではある。
それゆえ補充出来るならばしたいと常に考えているので、魔力を放出するものには敏感になっているようだ。
……でなければ自分は変態という事になるし、それだけは認められない。
……それにしても、一体誰に言い訳しているのだろうか、あまりにもな己の必死さに馬鹿らしくなってきた。
「それで?何だ頼みって」
ちょうど思考を打ち切ったタイミングで衛宮士郎が着替えを終えて振り返る。
「ああ…実は先程ランサーの巻き添えを食らって薬を浴びてしまってな。
 ステータスが変化しているようなのだが…見てもらえないだろうか」
「…ランサーも大概運悪いなって思うけど、アンタも負けてないなぁ」
説明を聞いて『うわあ』と言わんばかりに眉を潜めつつ、衛宮士郎が目を閉じる。
「う〜ん…あ、幸運値がBに上がってる。これがその薬の効果なのか?」
良かったなと我が事―まあ『未来の』がつく以外は実際自分ではあるのだが―のように喜ぶのに対し、
こちらは本当に成功していたのだなとホッと安堵の息が洩れる。
「…ん?あとスキルが何か追加されて………―――――――」
言葉の途中で、その内容を読んだのか先程と同じ表情を浮かべる。
「何だ、気になるから言ってくれ」
そのままなかった事にされても怖いので、内心何が書かれているのかビクビクしつつも続きを要求する。
「…『ギャルゲー主人公』スキル。特定の攻略対象との嬉し恥ずかしラッキースケベなイベント発生。
 気になるアノ子と急接近!!しちゃいなYO☆…だって」
「………何だその頭の悪そうなスキルは」
説明にもだが、今後の展開を考えると頭も痛いしウンザリする。
これで幸運値がBと言われても全く嬉しくないし、むしろガックリとくずおれたい気分だ。
肩を落とし、暗雲を背負うこちらに同情したのか、衛宮士郎がポンポンと労るように背を叩いてくれる。
「お試しっていいつつ一週間ガッツリあるみたいだし、その対象ってのが誰かわかんなくて不安だろうけど…
 俺も出来るだけ協力するし、何とか耐え切ろうな」
その言葉と行動の温かさがひどく身に沁みて、
思わず衛宮士郎に抱きつきたくなる衝動が沸き起こってしまった。





To be continued...



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