Darlin' サンプル
※サンプルですので一部分を抜粋して掲載しています。
多少改行などで違う部分はありますが、内容は同じです。
※漫画のサンプルは1番下にあります。




ゾロゾロと退出していく面々を見送ったら、何だか深い溜め息と共に座り込んでしまった。
「何だ、それ程緊張する出来事でもあるまい」
皆の湯呑みを片付けていたアーチャーが、こちらの様子を見て口元を歪める。
「うん…だけどホッとしたら力が抜けちゃって」
容姿の変化は……まあ割と日常茶飯事な出来事―嬉しくない―だし特に何とも思ってはいないけど、
これだけ長期間で生成量も減っていると言われただけに、魔力面での心配が大きかったから本当に安心した。
「………」
「ゎぷっ、ななな何?」
何を思ったか台所からスタスタとこちらへ歩いて来ると、無言で頭をガシガシと撫でられた。
予想外の出来事に困惑して見上げると、アーチャー本人も自分の行動に驚いているらしく、
ポカンとした表情を浮かべている。
「……どうもその姿で殊勝な事を言われると調子が狂う」
「何でさ」
お互いに眉間に皺をギュッと寄せて、似たような顔―いや実際同一体だから当然なんだけど―で向かい合う。
「殊勝でも何でもないって。遠坂から聞いたけど、緊急時の魔力供給で一番効率がいいのって
……その、アレ……なんだろ?」
「セックスか」
「……っぐ」
躊躇いもなくスパッと有耶無耶にした単語を言われて思わず絶句してしまったが、
気合いで赤面するのを堪えて話を続ける。
「そっ…れをこの姿でしなくちゃいけないとなったら大変だし、
何よりお前と俺でってのは…ちょっと考えたくなかったから、良かったな〜って」
言葉には出さなかったけど、元々殺し合いをした間柄だ。
主従になって少し関係は和らいだものの、肌を合わせるまでの仲では決してないし、
正直なところ合わせたくはない。……想像したら鳥肌が物凄く出た。
それに加えて俺の見た目が2ケタにも満たない子供だし、最悪の極みってヤツだ。
どうやら同じ事を考えたらしく、アーチャーも
「犯罪以外の何ものでもないな」
と言って同じように顔を青ざめさせた。
「とりあえず一番大きな問題はクリアしたけど……
こんな身体だからお前に迷惑掛ける事もあるかもしれないし、先に謝っとく」
「ふむ、そこは迷惑を掛けないようにしろ」
さすがアーチャー、子供の姿でも中身が『俺』である限りは容赦がない。
それに笑いながら、移動しようと立ち上がると視線が一緒について来る。
…何となく居心地が悪くて振り返ってしまった。
「何をする気だ」
「…洗濯物を干しに行くんだけど」
お互いに不思議そうな表情を浮かべつつ会話をしていると、アーチャーの眉間に皺が寄る。
「その身体でする気か、たわけ。余計に洗いものが増えるのがオチだ。
…いいからお前は部屋に下がっていろ」
「何でさ」
唯一のアイデンティティー…―そう言ってしまうのも悲しい話ではあるけど―を
奪われそうになって反論する。
「歩行もおぼつかないクセに。その身体に慣れていない人間が無理をするな。
部屋で鍛錬でもしていろ」
「―ッ」
しっかり見られていたらしい。
肉体と精神の齟齬を指摘されたら何も言えなくなってしまう。
しょうがないので今日のところは大人しく従う事にした。




「―で?それから何のかんのと理由を付けられて、家事するのを奪われたから泣きついてきたワケ」
『今日は』引き下がったが、翌日には感覚を掴んで普段と変わりなく生活出来るようにはなったけど、
いつもと違う状況―主に身長とか―にモタつくこちらを見かねて、
アーチャーに交代を進言―あくまでこちらがマスターだっていう体裁を
律儀に崩さない辺りがムカツく―してきた。
数回の内は仕方ないかと譲ったが、段々と何もさせてもらえない事にストレスが溜まって来た。
アーチャーが夕飯の買い出しに出掛けたのを見計らって、
衛宮家最強の女性陣に半ば泣きつく形で相談する事にした。
バカバカしいと顔にありありと書いてある遠坂を、桜が困ったような表情を浮かべて宥めてくれている。
「アイツの場合、過保護なだけって気はするけど…確かにやり過ぎね」
一ミリも伝わってないって悲しいわと理解不能な事を言いながら、
対策を考えてくれているらしい遠坂の横で、セイバーがポンと手を叩く。
「アーチャーはシロウが一人で行動する事を制限するのでしょう?
ならば誰かが付き添えば問題ないのでは?」
その提案に遠坂と桜がなるほど、と同じように手を打つ。
同時に同じ形の行動を取る辺り、さすが姉妹だなあと見当違いな事を考えてしまう。
「じゃあ士郎、家事をしたいと思ったら私達かライダーに必ず言う事。
アーチャーにもその旨は伝えて理解させておくから。…それでいい?」
「有難う!」
―後でライダーに聞いたところ、この時スゲエ喜んだ俺の顔がとても愛らしかったとかで、
女性陣は皆和んだと同時に『我が家に欲しい』って邪な炎が燃え上がったんだそうだ。
………何でさ。




To be continued...



漫画部分 サンプル
※各シーンを切り貼りして掲載しています。セリフも一部消してあります。

漫画部分 サンプル



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